香木 銘 「柴舟」 (しばふね)
政宗より拝領 (公益財団法人宇和島伊達文化保存会蔵)寛永年間(1624~1644)に日本に伝来したとされる香木。本資料は、父政宗から宇和島藩祖となった秀宗へ「唐物小茄子茶入」(からものこなすちゃいれ)とともに贈られた香木である。この香木は「一木三銘」とも「一木四銘」とも称され、同じ香木ながら分木して伊達政宗の所持した香木を「柴舟」(しばふね)、細川忠興(三斎、1563~1646)の所持は「白菊」(しらぎく)、小堀政一(遠州、1579~1647)所持は「初音」(はつね)の銘を持つ(また後水尾天皇1596~1680)の所持したものは「蘭」(ふじばかま)という)とされていることからもよく知られている(諸説がある)。
政宗は、幼い頃から秀宗へ文武両道にわたりこと細かく指導していた。秀宗にこの「柴舟」を贈るに際しての書状には、「秘蔵のしば舟の香一包」「今程可様の香は有間敷」と、政宗がその価値を特筆している。今日では寛永年間以後日本に入った香木の中で比類なき名香であると評されている。香木を守るために竹の皮で包まれ、錫製の小箱に入れた上で木箱に納め、厳重に保管されている。図版には伊達家伝来の香木より「一木四銘」を掲載している。
(「宇和島伊達家伝来品図録」解説より)
唐物小茄子茶入(からものこなすちゃいれ)
政宗より拝領 (公益財団法人宇和島伊達文化保存会蔵)
父政宗から息子秀宗へ贈られた茶入れ。茶入れは茶の湯では特に大切にされた濃茶を入れる陶製の小壷。なかでも「唐物(からもの)」と称する高級舶来品が収集され、権勢を示す道具として大いにもてはやされた。
伊達政宗書状
(年不詳)1月3日 小茄子茶入、柴舟のこと (公益財団法人宇和島伊達文化保存会蔵)
改年の挨拶に続き、政宗秘蔵の貴重な名香「柴舟」(しばふね)と「唐物小茄子茶入」(からものこなすちゃいれ)を譲る思いが綴られている。香木「柴舟」を政宗が入手したのは寛永3(1626)年の上洛中。政宗・秀宗共に在府中とみられることから、この書状は寛永5年以降のもの。
心地よい芳香を持つ木材のこと。沈水香木(じんすいこうぼく、俗称を沈香〈じんこう〉)と白檀(びゃくだん)が有名である。沈水香木(沈香)は、特に香道に使用される香木であり、薄片に削ったものを加熱して芳香を楽しむのに用いられる。白檀は熱することなく香るため、香道以外にも仏像などの彫刻や扇子や数珠などの材料として用いられる。比重が重く水に沈む、これが沈水香木(沈香)という名の由来である。沈香のうち、特に質の良いものは伽羅(きゃら)と呼ばれる。「日本書記」によれば、推古天皇3年(595)に淡路島に流れ着いたのが沈香の日本伝来と言われている。強壮、鎮静などの効能がある生薬でもある。
0 件のコメント:
コメントを投稿