お待たせしました。前回に引き続いて主な展示内容をご紹介します。ぜひこの機会に、伊達博物館を訪れていただき、本物をご覧ください。
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【第2展示室から】 「婚礼の華」
江戸時代、鍋島・伊達両家の間では3代にわたる縁組が執り行われた。伊達家5代村候(むらとき)と護姫(もりひめ・鍋島家5代宗茂公女)、7代宗紀(むねただ)と観姫(みよひめ・鍋島家8代治茂公女)、8代宗城(むねなり)と猶姫(なおひめ・鍋島家9代斉直公女)である。これらの縁から、伊達家には杏葉紋の付された調度品が伝来する。大名の婚礼は、藩と藩とをつなぐ重要な意味を持っていた。そのために誂えられた調度は、たった一人の娘の婚礼のために藩の威信をかけ、贅を尽くし膨大な数が揃えられた。その内面には、娘に対する愛情も加担したであろう。あらゆる人生の婚礼のなかでもひときわ華やかなものであったことが想像される。
伊達村侯・護姫像(だてむらとき・もりひめぞう)
【公益財団法人宇和島伊達文化保存会蔵】
【公益財団法人宇和島伊達文化保存会蔵】
村侯・・宇和島藩5代藩主。母は仙台藩主吉村の娘。享保20(1735)年、11歳にして封をつぐ。寛延2(1749)年遠江守に任じ、同3年に鍋島宗茂の6女護と結婚。行政諸般の制度を制し、藩学内徳館を開設。当時300諸侯屈指の良主といわれ、趣味も広く武芸も巧みであった。
護姫・・佐賀藩5代宗茂6女。結婚の時には多根姫といい、のち護姫。寛延3(1750)年12月7日、宇和島藩5代村侯と結婚する。本図は宇和島藩の御用絵師岩崎如伯周昌による。
【公益財団法人鍋島報效会蔵】
朱漆塗の盃で、鼠の嫁入りの様子をあらわす。四枚からなり、小盃から大盃の順に、神社での見合い・新婦邸での結納・新郎邸の玄関前での輿入れ・新郎邸大広間での婚礼、という順に、擬人化された鼠の嫁入りが進行する。本来はもう一枚、一番小さな盃に見合い相手を探す場面が描かれていたと推測され、五枚一組であったと考えられる。 高台内には大盃に「羊遊斎/更山作」、他は「羊遊斎」との銘があることから、作者は江戸時代後期の蒔絵師・原羊遊斎であることが分かる。羊遊斎は古河藩主土井家の御用蒔絵師をつとめたほか、鍋島家をはじめ他の大名家の御用も請けていた。
【公益財団法人鍋島報效会蔵】
内部に懸子を納めた梨子地の手箱。全体に池と築山を巡らせ、築山の頂部には松と橘を描き、蓋表には雉と庭木、側面にはホトトギスや野草などをあらわす。文様の空間には九曜紋を散らしている。みかんの一種である橘は、理想郷である常世の国に生える不老不死の果物として尊ばれ、松と組み合わせて長寿をあらわす吉祥模様とされる。この手箱は所用者不明ながら、九曜紋を用いる大名家の婚礼調度と考えられる。
梨子地九曜紋散松橘蒔絵大角赤手箱
(なしじくようもんちらしまつたちばなまきえおおすみあかてばこ)
【公益財団法人鍋島報效会蔵】
角赤手箱とは、身と蓋の口縁より四角にかけて隅金物にかたどり、荒い布目を出して朱漆塗りにし、他の部分を黒漆塗あるいは梨子地にし蒔絵をほどこしたもの。方形、角丸の被蓋造で、甲盛があり、塵居をつくる。内に納めるものに決まりはなく、化粧道具や身の回り品などを入れる。通常は、大と小の一対とする。この手箱は総体梨子地とし、池と築山から生える松と橘の樹を表し、模様の間に銀平文による九曜紋を散らす。所用者は不明ながら、九曜紋を用いる大名家の婚礼調度と考えられる。
紅綸子地立涌花卉模様打掛(べにりんずじたてわくかきもよううちかけ)
【公益財団法人鍋島報效会蔵】
紅綸子地に立涌模様を中心に、牡丹・菊・藤それぞれの花束模様を背面全体に配する。立涌模様は、金糸駒繍、摺匹田、白上げに周囲を紫糸で刺繍して縁取る、紫糸で刺繍し、その周囲を金糸駒繍で縁取る、という四種類の技法で表す。一つの模様を技法を変えて表現しているため、単調化せず、複雑な組み合わせに見える。植物文様も摺匹田・紫糸・金糸を中心に、所々にアクセントを加えるように萌黄や紅糸で彩りを加える。紅の地色とも相まって豪奢な雰囲気を醸し出す。武家女性の典型的な小袖類。
ひな人形・ひな調度【個人蔵】
宇和島7代藩主宗紀との縁組が決まった観姫が、引越しの際持参した婚礼道具の雛人形。御付女中の染川(そめかわ)に下げ渡され、親王雛を除く大部分が子孫宅にて保管、大事に守り伝えられる。厨子棚そのほかの雛道具はいずれも牡丹唐草蒔絵がほどこされる。鍋島家の家紋はつけられていない。
引越しの時の記録『観姫様御日喜越録』中に
「一、親王雛壱對 代ハ百八拾目
一、古今雛壱對 代ハ百八拾目
一、雛入箱四ツ 代ハ三拾七匁五分
一、御雛道具御厨子棚其外 代ハ壱貫三百目八拾八品」
とあることから、婚礼に先立ち誂えたことがわかる。
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